戦略的思考とは何か 改版
戦略的思考とは何か 改版』(岡崎久彦)を読みました。
Kindleのセールで安かったので買いました。タイトルだけ見て、戦略の教科書的なものを想像して買ったのですが、中身は1980年代の日本の国家戦略を論ずるものでした。思ったのと違いましたが、「日本が今後資源を割くべきは国防と教育だ」と主張している割にどちらにも詳しくない私としては読んでおくべき本でした。ちなみに、著者の岡崎さんは外務省の方で軍人ではありません。
この本を読んで感じたのは、まず情報を客観的に判断する大切さです。こうあって欲しいという願望とか、こうなるはずだという思い込みとか、あるいはこうあるべきだという価値判断とか、そういうものが正確な判断を阻害するのだということを改めて思いました。国家という単位で戦略を考えるのであれば、そういうものを排除して「自分の国はどういう状況に置かれているのか」を客観的に把握する必要があります。別に国家じゃなくても、何か判断する際には必要な姿勢です。
あと国防という観点でいうと、この本が書かれたのは1982年で冷戦の真っ只中、日本の脅威というのはほぼソ連のことで中国には重点を置いていません(ソ連の軍事行動を制約する存在という扱いです)。しかしながら、こんにちの情勢を考えるにあたっては、各国の保有戦力に詳しくないですが中国の存在は無視できないと思います。ロシアよりも中国なのか、米中露の三極構造なのか。一方で、どのような構図を想定するにしろ中露は日本の領土を露骨に欲しがっているのですから、アングロ・サクソン勢力と結んで国土を守るという戦略の基本は当時と変わらないはずです。適切なコストを負担して、国民の生活を守れる体勢を整えておくべきと思います。こういう議論は好まれないですが、必要な議論です。