「失敗の本質」と戦略思想
『「失敗の本質」と戦略思想 ー 孫氏・クラウゼヴィッツで読み解く日本軍の敗因』(西田陽一、杉野尾宜生)を読みました。
新書一冊読むのに何日かかってんだか…と思いますが、これまで大して本を読んでこなかったツケですね。Kindleで三国志を買ってあるんですが、読破に何年かかるのだろうと先が思いやられます。
さてこの本は、簡単にいうと『失敗の本質』という本を『孫氏とクラウゼヴィッツ』という本の観点から解釈し直すというものです。両方とも読んだことがあり、どちらも良い本だったので今回この本も読んでみたのですが、『失敗の本質』『孫氏とクラウゼヴィッツ』を読んでいなかったらよくわからなかっただろうと思います。で、『失敗の本質』は太平洋戦争(この本の言い方だと大東亜戦争)で日本軍のターニングポイントとなった戦いを考察するという本です。なのでこの本も太平洋戦争が題材なわけですが、『失敗の本質』は組織論的な視点で書かれているのに対してこの本は軍事理論的な視点で書かれているのでテイストがちょっと違います。本家『失敗の本質』より緻密さに欠ける部分があるなと思ったり、所々日本語がおかしいなと思ったりしましたが、全体的には面白い本でした。
孫氏やクラウゼヴィッツに比べて、当時の日本軍には理論的に物事を考えられる人間が少なかったのだろうなと思います。曖昧な目的で戦争を始め、途中からは戦争を続けること自体が目的になり、最後は名誉の戦死を強要するなんていう一連の流れを、論理的に正しいと説明できる人間がいるんでしょうか。筋の通らない話が世の中に蔓延るというのは、非常に危険なことだと思います。
一方で、孫氏やクラウゼヴィッツはこう言っているからそれに従うのが無条件に正しいというのも危険で、盲目的な信奉は結局戦前の日本と同じことをやっていることになります。古典というのは理解されるべきものであり批判されるべきものであると思います。
それにしても最近、読む本が偏っていたので、今度は全然違うジャンルの本を読もうと思います。たまには小説でも読むかな。